「衆参ねじれこそ民主政治の極意」と自民党の暴走
参議院の不要論が一部に囁かれている。彼らの発想は独裁政治の礼賛である。先ず、維新の会の橋下大阪市長。彼の政治手法は「俺が選挙で選ばれたのだ。黙って俺について来い。俺に反対する奴は、俺を選んだ民意に違反している」として、職員労働組合などを権力を使ってひたすら叩く。初めはその改革力に賛成して持ち上げていたマスコミもその正体がわかると離れ出した。するとこんどは同じ手法でマスコミを叩く。この手法は個人としては人気があるのに総理になれない、という石原慎太郎と同じである。現在の維新の会は公約では一致しないが政治手法で一致した両者がくっついた。
「衆参ねじれ解消」を今声高に叫ぶ安倍晋三と自民党。公明までも悪乗りして叫んでいる。これは反対勢力をなくし、独裁体制を敷きたいためだ。参議院は不要である、という発言も同じ系列に属する。民主政治はいかにして権力を一人に集中させないようにするか、を考えて近代社会が到達した政治体制だ。互いに意見が違っても政治は結論を出す必要がある。だから多数決制、アメリカでも上下両院という議会と大統領にはそれぞれの決定を覆す権限がある。日本でも参議院で否決されても衆議院で再可決するという手法が組み込まれている。
「衆参ねじれ解消」という安倍政権の口車に騙されてはいけない。この奥には参議院でも多数を取れば「安倍政権は独走しますよ」と書いてあるのだ。つまり、原発再稼働、消費税増税、TPP交渉惨敗でも参加、日米地位協定の永続、などがすんなりと進むということだ。
戦後の民主政治では自民党独裁を避けるために国民は賢い選挙結果をもたらしてきた。自民党が大勝して憲法改正のための3分の2に迫る勢いのときは、必ず反発した。
いま、安倍総理はヘイトスピーチのように、悪いのは民主党政権のせい、経済再生は安倍政権のお陰、と盛んに叫んでいる。TBSが自民党に不利な報道をしたと言ってTBSを批判している。これは橋下的独裁政治の兆候である。円安で輸出産業の好景気、株高ばかりを叫んでいる。マスコミもTBSのように自民党に睨まれてはたまらない、と提灯記事ばかり。円安で輸入に頼る日本の多くの産業はピンチであることの報道を控えている。デフレ脱却のために2%の物価上昇が目標。でも実質賃金は減少、というシナリオが成立しそうである。製造業の多くは賃金の安いアジアへ、輸出の相手国での現地生産を増加させている。だからアベノミクスは雇用の増加にはつながらない。年金生活者は貧乏になる。
これらは自明のことだ。でも自民党支持は断トツである。何が起こっているのだろうか。山本七平の「空気の力学」である。
TBSに対する自民党の恫喝:
これは正に正論を政治力でつぶした典型例である。重要法案は参議院で自民党がつぶしたのだ。民主党を悪者にして。法案否決の事情は永田町異聞氏の言う通りだが、もっと根本的な事情がある。問責決議案の根本原因であり、民主党まで賛成に回った根本原因は、政府与党による審議拒否、政府委員の欠席である。まさに国会軽視、であり行政が立法府の権限をはく奪したのである。野党による審議拒否とは全く異なる。政府与党による参議院委員会欠席がなければ問責決議案は可決されず、重要法案は成立したのである。この問題をこそマスコミは大きく取り上げるべきなのに、安倍政権に白旗を上げている。今日本はアベノミクスというアヘンより強力な麻薬を注射された状態である。これから立ち直るには太平洋戦争のような失敗を経験するしかないかも知れない。
それでも期待を持って、もっと大きく構えよう。「衆参ねじれこそ民主政治のはじまりだ」。政治がここから日本の進路を決めることができる手法を見出すことが必要なのだ。国民の良識を待とう。
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